菌を増やさないためには、いかに菌繁殖の適温を外すかが大切です。
「菌を増やさない」食品の取り扱い
今回は「食品の取り扱い」について解説していきます。
まずは食中毒予防の三原則を確認しましょう。
「菌をつけない」「菌を増やさない」「菌をなくす」
食品の取り扱いはこの三原則の2番目「菌を増やさない」の管理ポイントです。
食中毒菌発育の三要素は「水分」「栄養」「適温」
改めて食中毒菌発育の三要素を見てみましょう。
食中毒菌は「水分」「栄養」「適温」の三つの条件が揃った時に爆発的に増殖します。
通常、食品はこの三つの条件全てが揃っているので、食中毒菌が食品に付着すると、一気に増殖してしまいます。
裏を返せば、この三条件のうち、一つでも条件を悪くすれば、食中毒菌は増えにくくなります。
食品は「水分」「栄養」は取り除くことができないので、「適温」条件をいかに悪くするかが重要です。
即ち、食品の温度管理です。
食中毒菌の 温度帯別の発育速度
温度帯別の食中毒菌の発育速度を見てみましょう。
この図は温度帯別の細菌の増殖スピードを示した図です。
ほとんどの菌は10℃から60℃の温度帯で増殖します。
特に35 ℃近辺が一番増殖しやすい温度帯です。
菌が最も繁殖しやすい温度は、人間の体温と同じなので、手洗い不足の手では菌が急速に増殖していることになります。
また、食品の常温冷却、常温解凍は菌に繁殖の時間を与えてしまうことになります。
食中毒菌の分裂速度
主な食中毒菌の分裂速度についてです。
適温下において、食中毒菌が1回の分裂にどれだけの時間がかかるかをまとめました。
腸炎ビブリオ:9分
サルモネラ菌:18分
腸管出血性大腸菌:18分
黄色ブドウ球菌:24分
カンピロバクター:48分
腸炎ビブリオは1時間に5回以上も分裂を繰り返すことになります。
食品の常温保管が大変危険だという事がよく分かります。
現場ではどんなことに気を付ければいいのか?
実際の現場ではどのようなポイントに注意して作業をしたらよいのか、ポイントをまとめました。
合わせて、管理に有用なツールも合わせて紹介いたします。
1.食材の冷蔵・冷凍保管を徹底する
先ほど細菌が増殖しやすい温度帯について触れましたが、適温の時間が長いほど菌は増殖し続けます。
食材をいかにその温度帯に置かないか、というのが最大の管理のポイントです。
食材の入荷時の温度もチェックしてください。
入荷時点で想定より高い温度で入ってきていないか、また、入荷後に常温でおきっぱなしになっていないか、確認をしてください。
食材の品温が上がる前に冷蔵庫、冷凍庫に保管してください。
どのくらいの温度で保管したらよいかについては、厚生労働省が発行している大量調理施設衛生管理マニュアルで示されているので参考にしてください。
加熱後冷却が必要な現場も注意して下さい。
自然放熱は細菌が増殖する時間をたっぷりと与えていることになります。
厚生労働省からは30分以内に中心温度20℃近辺もしくは60分以内に10℃以下という基準が出ています。
食材の解凍について、流水で解凍する場合は時間管理を徹底していないと大変危険です。
スペースの問題はありますが、基本は冷蔵庫内で解凍してください。
放射温度計
原材料の入荷温度などの計測に使用可能です。
レーザーポインターを対象物に当てて計測します。
あくまでも、測れるのは表面温度のみです。
2.冷蔵冷凍設備の温度管理
冷蔵庫や冷蔵庫や冷凍庫に食材を入れたら全てが安心というわけではありません。
実際の温度に問題がないか、異常がないかを設備ごとにチェックすることが必要です。
定期的に温度をチェックしていれば、異常が発生した場合にもいち早く対応が可能です。
食材の入れすぎにも注意して下さい。
設備の容量70%を超えると、冷蔵効果が低下すると言われています。
温度データロガー
冷蔵庫、冷凍庫、製造現場等の温度管理のために使用します。
メモリー機能付きのタイプ(データロガー)もあります。
無線でデータをPCへ飛ばし、人手を掛けずに記録するタイプも増えています。
親機(中継機)
子機からデータを受信し、パソコンに送信します。
子機
センサを庫内に差し込み、データを親機に飛ばします。
3.食材の加熱殺菌
これは食中毒予防三原則の「菌をなくす」という部分に入りますが、食品の取り扱いというテーマなのでお話しします。
食品の加熱殺菌は中心温度75℃で1分以上加熱(ノロウィルス対策の場合は90℃で90秒以上加熱)してください。
実際の現場では中心温度計という機械を使い、食品の中心温度を測ります。
計測方法ですが食品によっては火が通りにくい場所を測る、また、食材の種類が多い製品は最も火が通りにくい食材を測ることがポイントです。
中心温度計
食品の加熱温度を計測するのに使用します。
主にセンサーと本体が一体になったタイプ、分かれているタイプがあります。
また、設定温度になるとタイマーが作動し、さらに設定時間に到達すると、ブザーが鳴って知らせてくれるタイプの温度計もあります。
一体型
コンパクトで安価なタイプが多いですが、食材までの距離が近いので、火傷をしないよう注意が必要です。
セパレート型
価格はやや高いですが、センサーが長いものが多く、安心して使えます。
まとめ
菌の繁殖条件の一つである「温度(適温)」は、食材の温度管理によって発育条件から外すことができます。
保管時は必ず低温管理、解凍時も低温で解凍、加熱時は殺菌可能な温度までなるべく早く持っていき、常温冷却はしない。
温度管理を徹底すれば、菌の繁殖は防げます。
この記事を書いた人
古澤 長流(ふるさわ たける)
古澤 長流(ふるさわ たける)
2018年折兼に営業職として入社し、名南営業所に配属。
現場経験を積んだのち、2019年に折兼ホールディングスの衛生管理グループに異動・転籍。
日々、衛生について勉強中。
大学時代は病原菌について研究していたので、学んだことを生かして食の安全に役立つ記事を執筆していきます!
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