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衛生対策としてこまめなアルコール消毒が重要
衛生対策として不特定多数の人が触れる場所や手指のこまめな消毒が、これまで以上に求められています。飲食店においては、特に注力されていることでしょう。
そこでこの記事では正しいアルコール消毒液の使い方と、併せて殺菌力の高いアルコール濃度やアルコールの除菌・殺菌のメカニズムを解説します。
正しいアルコール消毒液の使い方
アルコール消毒液を効果的に使うには、正しい使用方法を知ることが重要です。ここからは、アルコール消毒のポイントついて解説します。
殺菌力を発揮するアルコール消毒のポイント
ポンプはしっかりと押し切る
消毒液の使用量は、スプレータイプは3ml以上、ジェルタイプは1.5~2ml未満となっています。量に差がある理由は、スプレータイプはジェルタイプよりも乾きやすいためです。
消毒の際は規定の使用量を守らないと、きちんとした効果が得られません。容器がボトル式の場合は最後まで押し切らないと規定量のアルコールが出ないので、しっかりと押し切ることが大切です。ジェルタイプはボトル容器によって出る量が異なりますが、1プッシュ1mlのものが多いため、2プッシュするとよいでしょう。
擦り込み時間は15秒以上
WHO(世界保健機関)のガイドラインでは「手指衛生の全工程時間:20~30秒」と定めています。加えて、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)とWHOのガイドラインで「10~15秒間擦り合わせたあと、手が乾いた感じであれば塗布量が不十分」とされていることから、スプレータイプ・ジェルタイプともに15秒以上を目安に擦り込みます。
手指全体から手首までまんべんなく行きわたるようにしましょう。15秒経たないうちに乾いてしまう場合は、消毒液を追加することも大切です。
アルコール消毒の正しい手順
1.適量のアルコールを手に取る
ポンプ式の消毒液の場合ワンプッシュで適量が出るようになっているので、最後までしっかりとポンプを押してください。
2.爪間を意識しながら、指先に擦り込む
普段の生活では特に指先を使うことが多いので、指先は念入りに消毒しましょう。
3.手のひら全体に擦り込む
手を洗うときと同じく、丁寧に消毒液を擦り込みます。
4.指を組んで指の間にも擦り込む
手のひら同士を合わせて指の間に擦り込むだけでなく、手の甲側からも反対側の手を重ねて指の間を消毒しましょう。
5.親指を握り、擦り込む
親指の間は忘れやすいので注意してください。
6.手の甲全体に擦り込む
手の甲は皮膚が薄いため刺激を避けたくなることもありますが、衛生の観点を重要視してしっかりと消毒しましょう。
7.手首に擦り込む
肘や腕まで手洗いをするよう業務指示がある場合は、肘や腕まで消毒液を伸ばしてください。
8.アルコール消毒液が乾燥するまで擦り込む
手荒れや乾燥が気になる場合はハンドクリームをつけましょう。
手順は順番が前後しても構いませんが、すべての手順を踏んでください。
アルコール濃度と殺菌力の関係性
ここからは、殺菌に使用するアルコールの至適濃度範囲(有効範囲)について解説します。
アルコールの殺菌効果の至適濃度範囲
「薬局方(やっきょくほう)」と呼ばれる医薬品に関する品質規格書および、WHOガイドラインによって示されたアルコールの至適濃度範囲は次のとおりです。
- 日本薬局方(局方):76.9 ~ 81.4 v/v%
- 米国薬局方USP-NF :68.5 ~ 71.5 v/v%
- WHOガイドライン :60 ~ 80 v/v%
それぞれの値に差があるのは、試験方法、細菌・ウイルス種との混合比率、作用時間など、条件に違いがあったためと考えられます。
東京医療保健大学の研究(2019年)によると、多くの微生物に対して、 局方で規定されるアルコールの指摘濃度範囲は有効であると示されました。
特に、アルコール濃度が63 v/v%以上であれば、ほとんどの微生物に対して有効となります。
また、最も高い殺菌効果を得られるのは、エタノール(アルコール)分子と水分子の構成比が1:1のときだと言われており、アルコール濃度が77 v/v%の時に最も殺菌力が高くなると考えられます。
低濃度のアルコールでも細菌の増殖を防ぐ効果はある
8~20 v/v%の低濃度アルコールにも細菌・ウイルスの増殖を防ぐ効果はあります。しかし、菌の殺菌効果を得るまでに時間がかかったり、アルコールが消えると再び増殖したりと、効果は弱いといえるでしょう。
なお、細菌の細胞膜が壊れ始めるのは、濃度が40 v/v%を超える程度からとされています。
アルコールの除菌・殺菌のメカニズム
アルコールの除菌・殺菌に関する詳しいメカニズムは、現状明らかになっていません。
20~40 v/v%(中程度の濃度)のアルコールでは、過酸化水素を酸素と水と変える酵素カタラーゼの働きを失い、過酸化水素が生成されます。それにより、菌の体内構造物が酸化変性し死滅に至ります。(10~30分で死滅)
また、40 v/v%以上の高濃度アルコールは細胞膜に穴を開け、細菌の細胞膜を破壊することで、菌を急激に死滅させるといわれています。(5分以内に死滅)
加えて、ある程度水が存在する状況であれば、細胞膜を透過したアルコールが細菌の内圧を高めて溶菌することも可能です。
一方、アルコール濃度が高すぎると殺菌の速度が下がることが分かっており、80~99 v/v%では、菌が死滅するのに10~30分ほどの時間を要します。
最も殺菌力があるのが70 v/v%付近です。
正しいアルコールの使い方が効果的
感染症対策の一環としてより徹底した消毒を求められているなか、特に飲食店は対応に苦慮することも多いでしょう。手指のアルコール消毒の際には、適切な量を使い15秒以上かけて隅々まで擦り込むことが大切です。
また、殺菌効果の高いアルコール濃度やアルコールの正しい使い方について理解することで、より効果的な対策ができるでしょう。
この記事を書いた人
古澤 長流(ふるさわ たける)
古澤 長流(ふるさわ たける)
2018年折兼に営業職として入社し、名南営業所に配属。
現場経験を積んだのち、2019年に折兼ホールディングスの衛生管理グループに異動・転籍。
日々、衛生について勉強中。
大学時代は病原菌について研究していたので、学んだことを生かして食の安全に役立つ記事を執筆していきます!
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